今日,化粧は女性だけではなく男性たちも採用しはじめている.
従来から存在していた,ポマードやシェイビングローションだけでなく,ファンデーションやリップクリームなどを利用する若者が増えている.
コンビニやドラッグストアなどには男性用化粧品の専門コーナーができ,その種類は以前とは比べものにならないほど増加している.また雑誌では,男性向けファッション誌だけでなく一般誌までもが,衣服の特集だけでなく,ヘアスタイルや眉の手入れなど女性誌以上に化粧に関する特集を組んでいる.
男性たちが化粧を採用する起因には,いくつかの仮説が立てられる.例えば「女性からの化粧期待にともなう採用」,「被服のクロス・セックス化のように,化粧を女性ものと認識したうえで,自分らしさの演出のために採用」,「男性用化粧品などの登場により,化粧に対する関心が高まり採用」などである.
しかしながら,これまでの化粧行動に関する研究は,女性を中心になされており,男性の化粧行動の研究については極めて少ないため,先行研究からの仮説の立証は難しい.
クロス・セックスに関しても,土肥らが被服行動において検討しているが,化粧行動に関するものはほとんどない.
化粧行動について,飽戸はその起因に関する研究から,「対自的機能」と「対他的機能」を抽出した.
対自的機能とは,化粧の行為者自身の効果をめぐる化粧の機能のことであり,自己満足因子や気分因子などである.そして対他的機能とは,同性・異性に関わらず他者や社会を意識することによって生じる化粧の機能のことであり,個性化因子,美化欲求因子,身だしなみ因子などである.
つまり,「化粧をすることが楽しい」,「気分がよくなる」という化粧行動の主体的な楽しみとしての側面と,「男性からも女性からもきれいだと思われたい」という他者からの目を意識しての自己管理の側面を示唆する.
また,松井らの研究においては,化粧の動機として「人に良い印象を与えたい」「肌の色などの欠点カバー」「肌を守るため」などをあげ,化粧の役割を他者への印象管理と自己補完としている.
さらに大坊らは,化粧の関心・態度の構造の研究から,「メイクアップ重視・実践」と「化粧・美容への関心」の2つの因子を独立して抽出し,化粧の関心と実際の行動が別次元であることを示唆している.
本研究では,これら女性の化粧に関する先行研究の結果を参考に,大学生を対象として化粧関心,化粧行動,異性への化粧期待の調査をおこない,男女を比較検討しそれぞれの構造とそれらの関連を明らかにすることを目的とする.
【原著】
平松隆円・牛田聡子 2003 化粧に関する研究 (第1報)-大学生の化粧関心・化粧行動・異性への化粧期待の構造解明-,繊維製品消費科学,社団法人日本繊維製品消費科学会,第44巻,11月号,pp.58-68
【参考】