は じ め に
青年期の醜形恐怖症者,自傷者,摂食障害者などの増加と関連し,自己への関心が一層高まっているといわれる.
この原因には、自己の容姿の評価が極端に低くなっていることが指摘される(鍋田,2004).
もちろん,我々は自己について容姿だけを認知しているわけではない.
社会的経験を通じて自己に関する知識を蓄積し,能力,行動,性格などを評価し自己の存在を受け入れている.
そして,自己評価が行われるためには正確な自己認知が前提となる(沢崎,1984).
青年期は他者との関わりにおいて容貌や友人関係,学歴社会を反映しての学業能力など様々な要因が自己評価に影響することが明らかにされている.
そこで本研究では,青年期の自己認知・評価を検討するうえで自己について多面的にとらえているHarter(1985)のSelf-Perception Profile for Children(以下SPPC)を参考に,青年期の自己認知・評価測定尺度の作成とそれに基づく自己認知・評価の構造解明とそれらの関連性について検討を行う.
なお,SPPCモデルを本研究において選択した理由には,すでに眞榮城(2000)によりSPPCが邦訳され小学3年生から中学生2年生までの児童期について検討がなされているため,自己認知・評価の発達的変化を検討することが可能であること,SPPCはオランダ(Van Dongen-Melman, Koot, & Verhulst,1993)やアラブ首長国連邦(Eapen, Naqvi, & Al-Dhaheri,2000)などでも比較研究が行われているため,自己認知・評価についての国際的な比較検討が可能であることがあげられる.
調 査 の 概 要
1) 調査方法と調査時期及び被調査者
2005年4月から5月にかけて,関西の4年制大学の学生を対象に集合法による質問紙調査を実施.
調査対象者は,男性414人(平均年齢19.19歳,SD=1.40),女性348人(平均年齢18.95歳,SD=1.42)の計762人である.
2) 自己認知・評価測定尺度
SPPCは,Scholastic Competence(学業成績),Social Acceptance(友人関係),Athletic competence(運動能力),Physical Appearance(容姿),Behavioural Conduct(品行)という5つの下位尺度からなる自己認知に関する30の質問項目と,Global Self-Worth(全体的自己価値)という1次元の自己評価に関する6の質問項目から構成されている.
本研究では眞榮城(2000)の日本語訳を参考に,青年期の大学生に適用可能なように表現を改め翻訳を行い,それを用いた.
そして,自分自身の意識のあり方について、5件法で回答を求めた.
結 果
1) 自己認知・評価の因子構造
自己認知に関する30の質問項目の構造について検討するため,主因子法(Varimax回転)による因子分析を行った.
他の因子に対して負荷量の高かった項目を削除して,再度因子分析を行ったところ,5因子構造が明らかとなった.
次に,自己評価に関する6の質問項目の構造について検討するため,主因子法(Varimax回転)による因子分析を行った.
その結果,1因子構造が明らかとなった.
2) 信頼性の検討
自己認知・評価測定尺度の各因子について,信頼性を検討した.
内部一貫性を推定するCronbachのα係数を算出したところ,運動能力が0.84,容姿が0.80,友人関係が0.67,品行が0.55,学業能力が0.61,自己評価が0.75であった.
3) 尺度間の相関関係
自己認知・評価測定尺度の各因子について,Pearsonの相関分析を行った.
その結果,友人関係と学業能力について1%水準の,その他の組合せについて0.1%水準の有意な正の相関がみられた.
特に自己評価と関連では,容姿(r=.57, p<.01)が中程度の相関を,運動能力(r=.26, p<.01)や友人関係(r=.39, p<.01)や品行(r=.34, p<.01)や学業能力(r=.36, p<.01)が弱い相関を示した.
4) 自己評価を規定する自己認知の検討
発達的変化にともなう自己評価を規定する自己認知の差を検討するため,被調査者の年齢の中央値に基づき高群と低群の2群に分け,Stepwiseの変数選択法による重回帰分析を行った.
その結果,年齢の低群では容姿(β=.41)や友人関係(β=.23)や品行(β=.17)や学業能力(β=.16)が0.1%水準で有意に選択された(F=94.54 R²=.44 p<.001).
他方,年齢の高群では容姿(β=.49)や友人関係(β=.30)や学業能力(β=.24)が0.1%水準で有意に選択された(F=60.82 R²=.51 p<.001).
次に,発達的変化にともなう自己評価を規定する自己認知について性差の点から検討するため,男女別にStepwiseの変数選択法による重回帰分析を行った.
その結果、男性では容姿(β=.40)や友人関係(β=.21)や品行(β=.19)や学業能力(β=.18)が0.1%水準で有意に選択され(F=66.25 R²=.43 p<.001),他方,女性では容姿(β=.48)や友人関係(β=.28)や学業能力(β=.17)が0.1%水準で,品行(β=.10)が5%水準で有意に選択された(F=75.63 R²=.50 p<.001).
【原著】
平松隆円,自己認知・評価測定尺度作成の試み,2005年社会心理学会第46回大会,日本社会心理学会第46回大会論文集,pp52-53