場所を問わない,公衆場面での化粧行動は日常化しつつある.
若者は,様々な公衆場面で化粧を行うことについて,どのように考えているのか.
平松は,その許容の構造を明らかにするとともに,化粧行動や化粧意識とも深く関連する自意識や他者意識といった個人差要因が,化粧行動の許容にいかに影響しているのかについて検討している.
それによると,化粧行動の許容に関わる公衆場面は,行動の内容ではなく場面により構造化され,男女で許容に差のあることが明らかとなっている.
そして,その許容には,自己や他者の外面への注意の向けやすさが影響していることが明らかとなっている.
では,なぜ若者は公衆場面で化粧を行うのか.
例えば,女性の場合,加藤が指摘するように,化粧をする分だけ,男性より身支度に時間がかかる.
それを解消するために,公衆場面で過ごす時間を活用しているだけなのか.確かに,新聞紙上などで,公衆場面,特に電車内での化粧を肯定する意見には,忙しい朝の時間の有効活用というものが多くみられる.
しかしながら,総務省の『平成13年度生活基本調査』の結果によれば,過去の調査と比較可能な15歳以上の行動種類別生活時間の推移において,「身の回りの用事」などの一次活動時間や「余暇活動」などの三次活動時間は増加傾向にあるものの,「通勤・通学」「仕事・学業」などの二次活動時間は減少傾向にあり,必ずしも化粧をする時間の少なさを公衆場面で補っているとは考えにくい.
また男性であっても,駅のホームなどでヘアスタイリングや整眉を行う姿を見かけることもある.
米澤は,文化論の視点から,化粧が着こなしになった結果,見せる顔作りに励み,プロセスとしての化粧行動は,完成し化粧をした顔よりも自己を表現するものとして,身だしなみの域を超えた行動であると指摘している.
すなわち,化粧が粧いとしての意味を超え,化粧をすること自体が趣味となったため,場面に関わらず化粧を行い,他者にそれを見せているのだという.
だとすると,ある公衆場面において化粧をよく行う者ほど,その場面における自己化粧の程度,すなわち入念度は高いという仮説が成り立つだろう.
そこで本研究では,平松の研究をふまえ,若者自身の公衆場面における化粧行動の実態を明らかにし,自己化粧の入念度との関連性を検討した.
そして,これまで化粧行動や化粧意識に関する研究,また化粧行動許容に関わる公衆場面の研究でも,その関連性が検討された自意識や他者意識といった個人差要因との関連性についても検討を行った.
【原著】
平松隆円 2007 公衆場面における化粧行動と自己化粧の入念度の関連性,繊維製品消費科学,社団法人日本繊維製品消費科学会,第48巻,11月号,pp.42-49
